プロボウラー亀井勝江のブログ

(公社)日本プロボウリング協会公認プロボウラー14期生・亀井勝江のブログです

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見つめ合う・・


先日、テレビで、新宿のホストクラブの№1が出ていた。
男前でもなく、風采も上がらないそのホストが、どうして売り上げ№1なのか、興味深くて、その番組の意図に関係なく、みていた。このホストは、女心を操るのが、上手いし、妙な魅力があるのだ。じっとなめるように見つめる、その合間に他の女性客にその目線をからませ、見つめる。
じらしと疑惑を織り交ぜ、これで、一晩、一人から30万だって。やるね。

むかしむかし、ジャパンオープンで、テレビ決勝まで勝ち進み、優勝決定戦で稲橋和枝プロに負けて、準優勝になった事がある。プロテストを終えて間もなく、勢いもあっただろうし、その頃、球質はともかく、スピードはあったけど、選抜はラインぎりぎりでやっと通過できたくらいのスコアしか出なかった。
それが、本大会になって、予選、準決勝と勝ち上がり、決勝3位までいってしまった。このときの決勝は8名で、トーナメント方式によってテレビ決勝進出の上位3名を決めるという方式、それも、3ゲームでの対戦というもので、決して、ラッキーだけでは勝ち上がれないトーナメントだったように思う。私は、この決勝トーナメントを全勝して3位になったのでなく、一度負けて敗者ゾーンにまわって3位に食い込んだのだけれど、テレビでは、2位通過の斉藤志乃ぶプロには勝ったものの、稲橋プロに負けて2位で終わった。

この選抜と本大会の間の一日で、なにがあったんだ?と思うでしょ?ラッキーなんて期待出来ないのに。

このテレビ中継中、スポーツアナが、「亀井プロは、ある野球選手にピンを見つめて投げなさいとアドバイスを受けて、その通りにしたら、勝ち上がれましたといっていますと」レポートしていた。「その名前は言ってくれませんが」と

そうです。あったのです。
選抜が終わって、ホテルでテレビを見ていたら、巨人戦が中継されていて、柳田真宏選手が代打でヒットを打ち、巨人が勝ったときでした。
柳田選手は、あのミスターの長島氏に、史上最強の5番打者と言わしめ、マムシといわれたスタープレーヤーだったとの事。わたしは、野球音痴だから、知らなかったのだけれど、熊本の後輩が幼馴染で、その縁で、時々電話で話をしていたこともあって、そのとき、
お祝いの電話をした時の事。
「ボールから目線がはずれないんですね」といったら、
「ボウリングも同じだと思いますよ。投げた後、スポットを見るでしょう?ただ見るのではなくて、凝視するんですよ」
巨人へ移籍の前、西鉄のころ、プロボウラーになりたい思っていたほどの人の言葉を、翌日の本大会で、それだけを、呪文のように唱えながら、投げたら、ゲームが進むにつれて、タイミングが合わないとずっと苦しんでいたのが、嘘のように、いつの間にか、ピタッとあってきて、ストライクラインの調整の計算もピタッと合うという展開になって、あれよあれよの優勝戦になったというわけ、でした。

かのマムシの柳田選手は、その頃、スキャンダルの渦中の人だったので、レポーター氏に変に勘ぐられてもと言えなかったけど(それはないか)、今でも感謝しています。

教室では、「凝視して!」「狙ったところを、ボールが通過するまで、見届けて!」と言っています。そうすると、何かが判ってきます。
これは、私の、数少ない体験から、絶対お勧めのレッスンメニューです。

「見つめる」と、新宿のホスト君のように、稼げるかもよ。でも、見つめるところをまちがえないでね。

追記・・・レポーターの「ピンを見て」は、彼女の言葉の間違いです。見つめるところはスポット(三角形の目印)か、投げたいラインです。

 

2004年3月号