プロボウラー亀井勝江のブログ

(公社)日本プロボウリング協会公認プロボウラー14期生・亀井勝江のブログです

MENU

涙 と 汗 と

先日、今年最初の公式戦「関西オープン」があった。その折、業界の方と結婚してまだ新婚といっても良いくらいの一番幸せの時に、ご主人をなくした同僚プロに会えた。
訃報を聞いて以来大会の不参加が続いていたので、ずっと気がかりだった人だ。
プロテストの時、トップ争いをしたのに、亀井と違ってタイトル獲得数6個という順風満帆のプロ生活で、いつもにこやかなプロだったから、遅れて聞いた訃報に涙が止らなかった。
その彼女が居た。「どう?」と聞いた。「ボウリングに救われたのよ」「ボウリングをしていて良かった」といつもの彼女を見た。
1月末に、インフルエンザになった。特効薬は副作用が出て使えず、安静にするだけですと先生。39度が数日続き、37度が夕方だけになって、1日中平熱になるのに15日間。高熱の間、全身から汗の噴出で、一晩に3度全部着替えなければならない程びしょびしょになる。これは、放熱しているのだと途切れない痰と咳の中、これでよくなるとじっと固まったように寝ていた。平熱になったと喜んだのもつかの間、膝が固まったまま5cmも上がらないのだ。すり足で家の中を動いた。ウイルスが消えた3日後、残したままのドリルの仕事が気になってリネアに出勤した。3日目ボールを持ってアプローチに立ってみた。やはり歩けない。左足に重心が乗せられないのだ。一番心配していた事が起きた。ボウリング人生が終わった。
眠れない夜が明けるのを待ってリネアへ行った。最終ステップの両足広げたまま転がしてみた。何とかボールが行った。
「紅葉の会」のメンバーがクラブの月例会に出ませんかと言う。1歩でしか投げられないけど・・・。「どうぞどうぞ」と。みっともないかもしれないけれどすみませんと。4ゲーム投げました。はじめは1歩だったのに、いつの間にか、2歩になり3歩になり時々は5歩歩いていて投げていた。いつの間にか固まった膝が動いていたのだ。1人では、怖くてきっと投げなかった。まして4ゲームも。
後日、リハリビの理学士いわく。「強引に動かしたことになってそれが良かったようですね。」
2日後、“午後亀コンペ”、「不細工かも知れませんが、投げさせてください」と準備万端の参加選手の方々にお願いして投げました。3ゲームをおとなしいフォームながら投げ切りました。この時、ボウリングをしていて良かったと、心から思った。
ご主人を亡くした同僚プロもきっと、ボウリング仲間に救われたと言いたかったと思う。
ボールを投げられないかもしれない亀井に一緒にゲームに入れてくれた仲間たち、プロといえないボウリングをするかもしれない亀井に投げることを了承してくれた“午後亀コンペ”参加選手の方々、亀井も救われました。 
ボウリング人生、まだ続けられます。必ず、いつか心からのお返しを!


2013年4月号