プロボウラー亀井勝江のブログ

(公社)日本プロボウリング協会公認プロボウラー14期生・亀井勝江のブログです

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ボウリングの黒子から

ボウリングボールに穴を空ける仕事人をドリラーという。
自分のボールのドリルを始めたのは、プロになって3年経った頃だった。
多分、受験時のストレートボールの球質を曲げたいと模索してどんどん成績が落ちていった頃だ。随分ドリルも変えていったと思う。1968年頃PBAのツアープロで日本のプロボウリング協会の発足に貢献された、バズ・ファジオ氏の『ボウリングと云うスポーツは、はじめに指導を受けた人・はじめにボールをドリルしてくれた人により、その人のボウリング人生が決まってしまう』という有名な言葉がある。38年前に島根県でボウリング大会を見て、その競技性に惹かれその場でハウスボール、ハウスシューズで参加したのが亀井のボウリング人生の始まりだった事もあって、ドリル問題に悩んでいたから、彼の言葉は身に染みた。
手元に古いノートがある。1984年2月にボールのフイッティングの感想と、ドリルマシンの使用方法のメモがある。これが、ドリルの学習記録の始まりで、その後、メジャー表と数値の書き込みとコメントが加わって、現在39冊目。1pに1個のボールの記録だから、おおよそ、2300回の記録になる。これは、亀井のボールだけの記録で、テストボールの記録も全て残した。こんなテストを独りで考えて出来るわけがない。優秀なドリラーの方々を勝手に亀井のブレーンと決めて、悩むと教えを乞う。理解できなくて、電話の翌日北海道まで飛んだ事もある。関東も九州にも飛んだ。ドリルの現場に居てじっと見ていた時も。それらの方に殆どドリルをお願いした。その時のメジャーも再現して、全部記録している。
ボウラーのドリルをする時、亀井のように遠回りをさせたくないと、30年間亀井自身を見つめて実験し学習した財産をフル回転してドリラー稼業をしている。
ドリルは穴あけ作業ではない。手の骨格、関節の大きさ、指の方向、皮膚の状況などみんな違う。それが数値になる。その前に、スポーツ歴、ボウリング歴、投げ方、考え方などを頭に入れてメジャー表が決まる。特に初めてマイボールを持つボウラーには時間をかける。そうではないボウラーにはどういう状況で使用するのか、ラインナップのどこに入るのかと知ったうえで、レイアウトを作ってゆく。それから、穴あけの作業になるけれど、再現性が必要なので、メジャー通りに正確に空けなければならない。正確に空けてあればこれがデータになるので、どのようにでも発展も調整も出来る。そのうえで、投球を見ながら、サム(親指)のべベルカットとフインガーグリップの調整で仕上げに入る。大体、これで1時間30分から2時間はかかる。勝手にブレーンのドリラー歴50年以上のT氏もそうだった。(T氏におこがましいと怒られそうだけど)
「すぐ出来上がって渡してくれるよ」そういうところもあるとボウラー氏が教えてくれた。ありえないと思うけれど、もしかしたら天才なのかも。
ただ、使用中のボールでスコアが出ていて、怪我もなければ、そのまま再現となる。
まぁドリラーは黒子だし、苦しい仕事ではあるけれど、勝手に良い回転が出るリリースが出現して、この人にとってボウリングの財産が出来たと思った時、タコと傷だらけの指が綺麗になっていった時、どんなにうれしいか。密かに万歳してます。

* 6月号のコラムの中で「のりしろ」とあったのは、「のびしろ」の間違いです。「のりしろ」が増えたら小さくなってしまうし、困ります。
* 2月号のコラム、電気代の事、15000円の電気代が7月6000円を切りました。やりました。


2014年8月号